スペインでもっとも定評のあるプログラム

アディクションの予防・リハビリテーション・社会復帰支援

Proyecto Hombre(プロジェクト・オンブレ)は、1984年にスペインの首都マドリードに誕生した非営利のアディクション支援機関(治療共同体)です。英語では「ヒューマン・プロジェクト」、日本語では「人間計画」。アディクションの予防、リハビリテーション、社会復帰支援を活動の三本柱とし、2018年は27支部で1万8798人のアディクション問題を持つ人とその家族の受け皿になりました。スペインでもっとも定評のある支援機関であり、本部機能を持つプロジェクト・オンブレ協会は国連認定NGOとして海外へも活動の場を広げています。

「人」を大切にする

プロジェクト・オンブレの大きな特徴は、「人」に合わせた綿密なサポートと多職種協働です。回復施設が多いスペインの中で、文化も言語も異なる各地に根ざし、これほど多くの人とその家族に対応しているのはなぜなのか? それはもともとこの機関が、薬物使用者を犯罪者でも病人でもなく、一つの人生を生きる「人」として支援することから始まったことにあります。

「人」は変わることができる

プロジェクト・オンブレが次々と設立された80年代のスペインは、長い独裁政権後の急激な民主化と社会不安も影響して、ヘロインの爆発的使用が大きな社会問題となった時代でした。汚染された注射針によるHIVなどの感染症や過量服薬で多くの若者が街角で亡くなる中、さまざまな支援機関が立ち上がりました。プロジェクト・オンブレは、そうした機関の一つです。「人は変わることができる」と信じた数人の有志たちが、イタリアで人道的支援を展開し効果をあげていたProgetto Uomoという機関で研修を受け、それぞれの土地にプログラムを持ち帰って始まりました。その後も多くの人が言葉の壁を乗り越えイタリアで学び、新しいセンターを開設していきました。92年には国内でセラピストを養成すべく、本部機能を持つプロジェクト・オンブレ協会と研修センターが開設され、理念、方法論、経験が全国に共有されていきました。

「人」にプログラムを合わせていく

一人の薬物使用者とその家族が、プログラムを受け、地域で人生を再構築していく。薬物問題で悩む人と家族たちが、そのことを知りプロジェクト・オンブレに駆け込む――。予防、リハビリテーション、社会復帰支援を活動の三本柱とするプロジェクト・オンブレは、スペインの問題がヘロインからコカイン、その他のアディクションへと移り変わる中、新しいプロフィールと現場のニーズにあわせて対応を柔軟に変化させていきました。現在では、各支部が複数の施設で次のようなプログラムを展開しています。

 

●ベーシック治療共同体プログラム

●通所プログラム

●思春期プログラム

●予防プログラム・企業予防

●その他のプログラム(ギャンブル、インターネット:ICT、併存疾患、母子施設など)

●刑務所内治療共同体

●刑務所内介入グループ

●ハームリダクション

誰もが人生の「主人公」

プロジェクト・オンブレでは、問題は薬物やアルコール、インターネットではなく、「人」を中心に起きていると考えます。アディクションの問題は、必ずしも病気ではなく、その人や取り巻く状況の中で何かがうまくいっていない「兆候・症状」の1つなのです。今ここから、この自分から、何ができるか? どんな自分になりたいか? プログラムでは、単なる脱アディクションではなく、その人が自分自身を取り戻し、「主人公」として人生を発展させていくことに伴走していきます。